防大かわら版
防大かわら版vol.169

掲示内容一覧
- 遠泳訓練参加所感
- 定期訓練参加所感
遠泳訓練参加所感
牧 学生
「痒い。痒くてたまらない。」これが初めて走水の海で泳いだ私の感想です。
この夏、元水泳部という理由で遠泳を甘く見ていた私に天罰が下りました。運悪く今年は海水中のプランクトン量が多く、その影響により体中が痒くなるという予想もしなかった問題が発生したのです。しかし将来幹部自衛官になる者として、どんなイレギュラーにも迅速に対応しなければなりません。同じ苦しみを分かち合う同期と試行錯誤した結果、軟膏とワセリンを身体に塗りたくるという対策法を編み出し、何とか痒みを克服することができました。対策法を試した洋上訓練後に再び痒みが出なかった時の感動は一生忘れないと思います。
また、印象に残っていることは、泳ぎが苦手な学生の驚異的な成長です。指導教官の熱心な指導や、絶対に助けてくれるバディ(訓練においてペアを組む学生)をはじめとする同期の支えもあり、当初5mも泳げなかった者が一番速いグループで8kmを完泳するなど、多くの学生が凄まじい泳力の向上を見せました。
私自身遠泳本番で足がつってしまった時は、横にいるバディや周りの同期が肩をかしてくれたことで何とか進み続けることができました。逆にバディがクラゲに刺されて動けなくなった時は、手を貸して一緒に止まるなどして常に支え合いゴールを目指しました。
今回の遠泳訓練で、私は「同期の大切さ」を身に染みて感じることができました。遠泳訓練を通して培った「つらいことがあれば共に悩み、励ましあう。どうしようもない時は助け合い、支えあう。」という絆と経験を大切にし、今後の成長に活かしていきたいです。


溝江 学生
防衛大学校では7月の約1か月間、夏季定期訓練が実施されます。1学年にとって、その訓練の山場となるのが走水海岸沖での8km遠泳です。
私は幼い頃に水泳を習っており、ある程度泳ぎは得意でしたが、何より8kmという長い距離と波のある自然海という脅威に不安でいっぱいでした。
当初、プールでの30分泳から始まり、60分泳、90分泳と少しずつ時間を伸ばして訓練を行いましたが、特に強い疲労を感じることはなく、淡々とリラックスして泳ぐことができました。プールでの訓練を重ねるごとに初期の不安は無くなり、海面訓練が楽しみで仕方ないと同期と話をしていました。
初めての海面訓練当日、海の厳しさを知ることになりました。透き通った静水のプールとは異なり、独特の波やうねりが強く、海水は緑色に暗く濁り、完全に足の着かない海に恐怖を感じました。何度水をかいても、何度水を蹴っても、波やうねりに流され、中々前へ進むことのできない絶望感、海水の塩気で口の中がピリピリし、顔と首をアカクラゲに刺されるなど、初めての海面訓練で心が折れました。
それでも同期と声を掛け合いながら波に抗い、海での遠泳に身体を慣らし2km、3km、4kmと無理なく距離を伸ばして訓練を実施したことで8kmを泳ぎきれる自信が少しずつ湧いてきました。しかし、8km遠泳当日、荒天により実施が延期となり、もどかしい思いをしましたが、来たる本番に向け気持ちを高めました。
そして8km遠泳本番、区隊リーダーによる士気上げの後、遠泳開始。波が高く潮の流れも強い悪条件により、途中のコース変更があったものの、それまでの訓練で培った同期との絆で苦しさを何とか乗り越え、完泳することができました。
この訓練を通じて、気力・体力を養えたのはもちろんのこと、互いに手を取り合い、同じ目標に向かって努力するたくさんの同期との絆を深められる有意義な訓練にできたことを誇りに思います。
風間 学生
告白します。私は遠泳を甘く見ていました。
私は入校前から遠泳を念頭にジムに通い、ほぼ毎日2,3㎞泳いでいました。これで遠泳も楽勝とはいかないものの、同期よりは余裕をもって泳ぎ切れるという自信がありました。事実、課業時間外の補備訓練対象者に該当することもなく、夏季定期訓練前に行われる毎週の訓練時間におけるプールでの60分間泳も余裕がありました。
遠泳の真の恐ろしさを知らぬまま夏季定期訓練に突入した私にとって最初の壁は立ち泳ぎでした。これまで立ち泳ぎなどしたことがなく、更に水中でのバディチェックでは手を挙げたまま泳ぎ続けなければならないため非常に苦労しました。しかしその時は「本番は海水だから浮くだろう」と楽観的に考えており、あまり危機感を持っていませんでしたが、今考えるとよくあの海で生き残ることができたなと不思議です。プールでの時間泳も60分から90分、120分と時間が延びていき、疲れもどんどん溜まっていきました。その時、私を救ったのが示された戦力回復時間です。体力がリセットされ、そこで思うのが浮力がある海で早く泳ぎたい。その一心でした。海で泳いだことも無かったため、少し楽しみでもありました。
待ち遠しかった海面訓練でも、私は壁にぶつかりました。それは塩味です。クラゲや波、底が見えないことの恐怖はもちろん、一番衝撃的だったことが海水の味でした。息継ぎのたびに入ってくる濃い塩水により口の中が痛い日々、加えてあんなに期待していたのに沈んでいく立ち泳ぎ…。海面訓練をするたびに私は、はたして8㎞泳ぎ切れるのか、泳げたとしても遠泳後は確実に体が動かなくなるのではないかと思っていました。遠泳に対し不安が立ち込める中、毎日の訓練で、バディをはじめ周りを泳ぐ同期たちの姿はとても励みになりました。
天候による海面訓練の中止や遠泳本番の延期は精神的に参りました。辛いことが先延ばしになった不満、遠泳前の4日間海面訓練が実施できていない不安、突然の休養日…。それでもやる気が途切れなかったのは同期の存在でした。当日の晴天を祈って同期がてるてる坊主を作っていたのは今となってはいい思い出です。
遠泳本番、今までの悪天候が嘘のような晴天で波も穏やか、と聞いていたものの、いざ入水してみると驚くような冷たさでした。沖では波も今までにないくらい高く、震える体で必死に泳いでいました。クラゲも多く、これはもう引き返そうか、と何度も心が折れかけました。そのたびにバディのあの屈託のない笑顔と前を泳ぐ同期の足に励まされました。今日までの水泳訓練、訓練指導教官からの応援の御言葉、上級生からの激励など、自分たちは多くのものに支えられていることを思い出し、「泳ぐしかない。いや、絶対に泳ぎ切れる」と思うようなりました。
泳ぎ終わってからはあっという間でした。気が付いたら学生舎でいつの間にか次の日の朝でした。正直、疲労感よりも達成感の方が強く、なによりも無事に泳ぎ切れたことへの安堵でいっぱいでした。
今回の訓練を通じて同期の存在が自分にとってどれだけ励みになったか、日々の努力が自分の自信に繋がったことを身に染みて痛感しました。これからの防大生活は決して楽な道ではないですが、この思いや経験を忘れずに自分の糧として同期とともに成長していきたいです。


川口 学生
夏季定期訓練において、1学年は8kmの遠泳訓練を実施しました。その中で私は、4大隊の先頭に位置し、全体の整頓を指示することやペースメーカーとしての役割を担いました。この際、2点のことに着意して取り組みました。1点目は、常にリーダーシップを発揮し、仲間を統率することです。遠泳では、予測困難な波の中で人員掌握のため列の整頓や教官の指示の共有が必須です。列の整頓においては、先頭に位置する自分が定期的に振り向いて縦列横列を揃えるように指示を出しました。そのため、泳ぎながらでも遠くまで響く声量が出せるよう泳法を工夫すること、それが可能となるよう泳力を向上させることを意識しました。2点目は、集団で行動することの自覚です。集団がまとまって行動するには、自分勝手な行動をする者が1人でもいれば、集団の目的は達成できません。遠泳でも自己中心的に動くのではなく、隣の学生の体調を気にすること、視野を広げて周りに意識を向けることが全員で目標を達成するために必要です。遠泳当日、遅れている人がいれば励まし、誰一人として欠けることなく全員で泳ぎ切り、海岸に上がった瞬間は、同期との協調・協力の大切さを改めて感じました。
リーダーシップを発揮すること、集団で行動することは遠泳のみならずこれからの防衛大学校での生活や各種訓練においてとても重要だと考えます。これからもこの教訓を忘れず、壁にぶつかった時でも同期と共に乗り越えていこうと思います。


夏季定期訓練参加所感【陸上】
池田 学生
2学年陸上要員の夏季定期訓練は、防衛大学校・関山演習場において実施され、私は陸上戦闘における各個動作及び夜間行動の習熟度を高めることに重点を置き参加しました。
特に印象に残っているのは、歩哨・斥候訓練及び夜間の徒歩行進訓練です。
歩哨・斥候訓練では、敵陣地までの距離、多様な植生及び昼夜における見え方の違いなどを考慮し、偵察中の仲間同士の間隔や企図の秘匿等、地形や状況に合わせ臨機応変に行動する意義について学ぶことができました。
夜間の徒歩行進訓練では、団結・規律・士気を維持しつつ32kmを行進しました。当初は軽かった足取りも20kmを経過すると疲労により徐々に重くなりました。加えて、睡魔にも襲われ、肉体的にも精神的にも厳しい状況でした。そのような中、休止時間において仲間と励ましあい、こっそり冗談を交えた会話をすることで気力をなんとか保つことができ、無事完歩した瞬間の達成感と喜びは生涯忘れることのないものとなりました。
本定期訓練を通じ、識能面において更なる習熟が必要なこと及び精神面において強さに磨きをかける必要があると感じました。
今後は、将来自分の部下となる者のためにも、あらゆる機会を活用し、勉学・訓練に励みつつ心身を鍛える所存です。


佐々木 学生
防衛大学校における夏季定期訓練では第3学年の陸上要員が十数名ずつのグループに分かれ、全国の駐屯地に配置され部隊実習を行います。私は7月2日から21日までの間、三重県津市にある久居駐屯地に配置され、一生忘れられないと思える熱い夏を過ごしました。
久居駐屯地では、我々学生が部隊の隊員とともに様々な訓練を行いました。経験豊富な中隊長及び小隊長のもとで、地形や障害物の位置といった情報を基にした偵察及び攻撃における経路の選定、不測事態に対する迅速な状況判断、適切な指揮・統制、隊員との信頼関係の築き方、そして物事の捉え方など、幹部自衛官として求められる多くの資質を学ぶことができました。加えて、規則・教範等の根拠を基に自ら考え行動すること、また、その行動に責任を持つことの難しさを身をもって実感しました。
部隊における隊員の年齢層は、幹部・陸曹・陸士を含め20代から50代までと幅広い層にも関わらず、互いに心を開き合い、私たち学生を温かく迎え入れてくださいました。連隊長からは「上下の壁は上からしか壊せない。下につく者は自然と上の者との間に壁をつくる。だから上に立つ者は恐れずにその壁を壊し続けなさい。」というお言葉をいただき、深く心に残りました。階級や年齢に差はあっても、同じ任務にあたる自衛官同士が築いている信頼関係の強さに、強く心を打たれました。それと同時に、部隊の方々が私たち防大生に寄せる大きな期待も、ひしひしと感じました。
今回の部隊実習で得た知識や感覚は、防衛大学校の中では決して得られないものばかりであり、非常に貴重な経験となりました。
この実習を準備・支援してくださったすべての方々に心から感謝するとともに、この感謝の気持ちを忘れず、将来幹部自衛官として部隊に恩返しができるよう、これからも努力を続けていきます。


井村 学生
今年の夏季定期訓練は、職業としての陸上自衛官を体感するいい機会でした。これまで防衛大学校では、共通要員として1年、陸上要員として2年の間、断片的な訓練を受けてきました。
4学年陸上要員の夏の定期訓練は、これまで分けて習ったことを一連の動作として行います。東千歳演習場という広大な演習場を用いて実戦に近い形で訓練するため、防御と攻撃に分かれそれぞれに状況に応じた任務が付与されます。学生は訓練班単位で動き、陸上戦闘の基礎中の基礎である普通科部隊の1個小隊を構成する人員として動きます。
今までに受けた訓練のように決まったシナリオに沿って正しく動けるようになることが主の訓練ではなく、正しく動けることは前提で、任務完遂するためには、どの作戦が有効なのかを考え、複数の作戦を立案し、自分たちで最適な作戦を選択し、これに見合った周到な準備を行い、実践してみて、得られた結果からフィードバックを得ることが求められました。これらの思考過程は、部隊の規模がより複雑かつ大規模なものとなったとしても通ずる部分があると思います。陸上自衛官として、陸上自衛隊という組織が有事の際に担う役割を模擬的に体験できたのではないかと感じています。
総合訓練では、相手がどのような状況で何を考えているのかを全く知らない中で、奪取することを命ぜられた地域の攻撃や、死守することを命ぜられた地域の防御をしました。これまで防大で学んだことを総動員しながら行動してみましたが、自分の取った行動が合っていたのかは未だにわかりません。しかしながら、有事の際に陸上自衛隊が取る一連の行動はなんとなく理解できた気がしています。一連の行動がわかると、小隊長では第一線で任務完遂のために指揮を執ることが、中隊長では隷下部隊を効率的に運用することが、作戦本部では状況に即した判断をすることが大切になってくるのかと、配置ごとの役割も理解できた気がして、未来を少し具体的に考えることが出来るようになりました。
今回の訓練で部隊での一連の行動をやってみたことで、知識や技術の未熟さを痛感すると同時に将来の展望が少し開けた感じがします。未来を見据えながら、足りていないと感じたところを重点的に、これからの生活を通じてさらに素質や教養を磨いていく所存です。
最後に、今回の訓練を支援していただいた各部隊の方々、厳しくも優しい指導をしてくださった訓練担当指導教官の方々に深くお礼申し上げます。ありがとうございました。


夏季定期訓練参加所感【海上】
望田 学生
私にとって今回の夏季定期訓練は、2学年に進級し、憧れの青い迷彩服に袖を通して初めて臨む定期訓練でした。
2学年海上要員の夏季定期訓練は乗艦実習及び呉・江田島研修を主とするもので、海上要員に決まって3カ月、春季定期訓練及び普段の訓練で学んだことを、ぎこちなさは残るものの少しずつ形にすることが出来た期間であったと思います。
乗艦実習では、護衛艦「さわぎり」「のしろ」に分かれて乗艦し、艦内生活を体験しながら溺者救助訓練や防火訓練等、様々な訓練に参加、研修させていただきました。
実際に航行する大きな艦艇に乗艦するのは、人生で初めての体験であり、波を砕くたびに動揺する艦艇の中で、最初は船酔いに苦しみましたが、ひとたび甲板に出てみると艦が切る風が心地よく顔を打ち、見渡す限り水平線が続く景色に船酔いも吹き飛びました。また、雨が上がった海上に現れた両端が海面につく大きな虹や、月明かり以外の光がない夜の航海で眺めた満天の星など、日常生活ではそう簡単に見ることができない景色に出会え、海上での勤務にさらに魅力を感じました。
呉・江田島研修では呉地方総監部や幹部候補生学校などを研修しました。特に幹部候補生学校の研修では、1学年時にお世話になった当時の4年生の方々が生活する様子を見学するとともに懇談の時間もあり、自身の防大卒業後の将来像をより具体的に描くことができました。
全般を通し、今後海上自衛官として生きていく上での基盤となる精神を育むことができたように感じています。今後はこの訓練で学んだことを活かしつつ、日々の訓練に励んでいきたいと思います。


浦 学生
私は令和7年7月1日から25日の間、3学年海上要員として海上自衛隊の陸上部隊及び航空部隊での研修並びに防衛大学校内で訓練を行いました。昨年までとは異なり、乗艦実習が行われなかったため、4個実習班に分かれ、地方隊の陸上部隊や航空部隊の研修を約2週間かけて行うこととなりました。
舞鶴地方隊研修では、後方職種の重要性を学ぶことができました。私は、今まで水上艦艇、潜水艦及び航空機などの戦闘職種しか目にしてきませんでしたが、今回の研修で後方職種の支援がなければあらゆる作戦遂行が不可能になると強く認識することができました。
厚木航空基地研修では新たな職種との出会いがあり、自分の職種希望に大きな変化がありました。私は今まで潜水艦希望でしたが、厚木航空基地で航空機を整備する隊員に出会い、誇りを持って任務を行う方々に憧れを抱きました。パイロットは花形職種と言われていますが、パイロットは航空機が整備されていなければ任務を遂行することはできません。パイロットが飛行できる状態を万全に整えるため昼夜を問わず勤務する。まさに縁の下の力持ちであるこの仕事に携わりたいと強く思いました。
また、私はこの定期訓練で理想の幹部の姿を目にすることができました。その方は、部下と上司とも円滑なコミュニケーションを行い、冗談を言い合えるような関係づくりをされていて、常に全員が発言しやすい環境を作っていました。周りを見る力や雰囲気作り等学ばなくてはいけないことはまだまだたくさんあると自覚できた定期訓練であり、今後の生活の糧となる非常に有意義な期間でした。


田邊 学生
夏の盛りを迎え、ますます暑さ厳しくなる七月末、我々は防大生として最後の夏季定期訓練を終えました。4学年海上要員の夏季定期訓練は機動艇による横浜巡航と乗艦実習を主に行いました。
機動艇による横浜巡航では10人程度の学生で機動艇を運航し、横浜まで行き、無事に帰ってくる事ができました。学生主体の小型艇で大小様々な船舶が行き交う横浜周辺の海域を航行するのはとても緊張しました。しかしながら、そのような船舶が輻輳する海域での運航を通して自分の位置の把握や各種海事法規の遵守、事前に設定したコースを柔軟に変更し操縦するといった今までの訓練や練習してきたことが大いに役に立ち、自分にとって良い経験になりました。
乗艦実習では訓練支援艦「くろべ」に乗艦しました。訓練支援艦というのは名前のとおり各種訓練、特に対空射撃の訓練に必要な標的を運用する艦です。今までの訓練で乗艦させていただいた他の護衛艦と違い、訓練を支援することを主目的としているため、この艦独特の装備や運用を実習でき、去年までの乗艦実習とは違った経験となりとても興味深かったです。特に去年までは射撃を行うだけだった対空、対水上射撃訓練では事前の標的の送り出しから事後の標的回収までを見学したことで、射撃等は訓練全体のほんの一部分にすぎず、いままではその一部分しか見ていなかったのだと気付かされました。
このような夏季定期訓練を通じて私が得た学びは下準備や後片付けといった表面化しづらい側面の大切さです。横浜巡航においても一番のメインは横浜まで運航していくことですが、当日までに班内で分担して海図の作成や気象海象、航行警報や出入港船情報といった様々な情報を収集し準備を行いました。乗艦実習でも前述の通り様々な準備等を実習しました。こうした裏方的な運用こそ決して疎かにすることは出来ないのだと改めて実感し、そういった部分にもしっかりと気を配れる幹部自衛官になろうと決意しました。
最後に、今回の実習を支援していただいた各部隊の方々、特に「くろべ」の乗員の皆さんに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


夏季定期訓練参加所感【航空】
松久保 学生
2学年航空要員の夏季定期訓練では、滑空機運用実習と輸送航空隊研修を行いました。
滑空機運用実習において、私達学生は航空自衛隊員役として「富士川航空団」という仮の部隊を編成し、その一員となって滑空機(グライダー)を運用しました。期間中により多くの回数グライダーを飛行させ、航空団を精強化することを目標として訓練することで、滑空機への搭乗や各種勤務を通じて空中勤務特性などを学びました。
隊員全員がそれぞれの任務を全うすることでやっと一つの機体を飛ばすことができたこの訓練を通じて、航空機を運用するには部隊のどの部署も欠けることができないのだということを学び、航空自衛隊は「掛け算」の組織であることを再確認する機会となりました。
輸送航空隊研修では埼玉県の入間基地で5日間の研修を行いました。研修では部隊の方々のエスコートのもと、部隊の概要や整備現場の見学をさせていただきました。これまで馴染みのなかった部隊について学ぶことができたとともに、部隊で実際に勤務されている方の声を聴けたことで、座学では得ることのできない知識を得ることができました。こういった経験は将来自分がどのように勤務するかのイメージアップにつながる貴重な経験でした。
今回の定期訓練は、将来航空自衛隊の幹部になる者として必要な知識の獲得や、エアマンシップの醸成ができた充実した一か月でした。これからの訓練も任官後の資とするため全力で取り組んでいきます。


渡辺 学生
3学年航空要員は全国の戦闘航空団(戦闘機を運用する部隊)に分かれて約3週間の部隊研修に参加し、私は北部航空方面隊の第2航空団千歳基地を研修しました。千歳基地は24時間365日スクランブル発進等の対領空侵犯措置態勢を整えているため、昨年度研修した輸送機部隊とは異なった戦闘機部隊ならではの緊張感を感じることができました。
研修では航空機を運用する飛行群、整備補給群、基地業務群、気象・管制等の基地所在部隊の研修を通じて、どの職種においても責任感と誇りをもって勤務されており、国防という重責を担う者として、職種を超えて強い連携と信頼のもと任務にあたっていることが印象的でした。
その中でも特に印象に残っている研修は、F-15戦闘機の体験搭乗です。旋回時に身体にかかるGの負荷は想像をはるかに超えるものでした。そんな中でもパイロットは確実な操縦を行い、冷静さを保ち続けていた姿からパイロットという職業の厳しさと、技術の高さに圧倒されました。
この他にも、部隊の空曹士の隊員と一緒に生活し、普段聞くことのできない空曹士目線での部隊の様子を聞くことができ、部隊勤務の実情を知る貴重な時間となりました。
最後に任務でお忙しい中、有意義な実習となるよう企画、支援してくださった部隊の方々、教官をはじめとする学校職員の方々に感謝するとともに、部隊実習で学んだことを今後の学校生活、任官後の部隊勤務に活かしていきたいです。


吉村 学生
4学年航空要員の夏季定期訓練ではグライダーを用いた航空機運用実習、校内訓練、T-7練習機を操縦する飛行適性検査を行い、特に印象に残ったのは航空機運用実習でした。本訓練に向けた準備は2学年時から実施しており、防大の航空要員における訓練の集大成です。場所は静岡県に所在し、北に富士山、南に駿河湾を望む富士川滑空場において富士川航空団と呼ばれる仮想の航空団を編成し1週間、グライダーを用いて模擬的な航空団の運営をします。
私は本訓練において団司令の幕僚である「監理部長」として勤務しました。主な任務は全般日程の作成、各会議の計画及び執行、VIPによる視察等への対応でした。監理部長を含む「司令部」と呼ばれる幕僚が航空団の頭脳となり、各部署との調整やグライダー飛行計画の作成を行います。4学年の基幹隊員は、団司令部の幕僚や現場指揮官等の役職を担い、2学年が新隊員のパイロットとなり、戦力発揮を図ります。
司令部としては入念に準備し訓練に臨みましたが、訓練期間中雨天が続き、滑走路の被害復旧や訓練計画変更のため、あらかじめ想定していた一週間とは全く違うものとなりました。そのような状況でも航空団の活動は続くため司令部は先行的な業務を行い、団司令の決心に資する業務をしなければなりません。そのため、各役職に就いた同期と意見・情報交換しながら、任務達成のためにどうするべきか共に考え実践していく過程で得るものが多くありました。「現場から必要な情報を集めることの難しさ」や、「司令部の考えを団全体に共有することの大切さ」等を認識し、司令部の幕僚活動は団全体の活動を左右するものであり、団の運営に直結する非常に重要なものであると感じました。4年間でもっとも過酷でしたが学びは多く、充実した1週間になりました。

